コース受講で総額約50万円を払って分かった救急救命士にとって本当に必要なコースとは

管理人も行きたい

筆者はこれまで、日本で受講できるOff The Job Trainingのほぼ全てを受講した経験があります。

コース受講代、必要なテキスト、交通費や宿泊費を全て含めると最低でも50万円近くは払ったはず。

決してコースマニアではありません。

むしろコースで指導するインストラクターの技量を自分の目で見たかったのと、自分自身の中で「知らないことがある」ことが許せなかったからです。

多くのコースとそこでの内容を考えてみると、

救急救命士にとって本当に必要な内容が見えてきました。

今回は救急救命士にとって必要なことと、筆者が受講を勧めたいコースを紹介します。

※内容は全てエビデンスのない個人的主観です。

救急救命士にとっての外傷系コース

まずお断りしておきますが、救急救命士にとって外傷はとても重要です。

高リスク受傷機転や重症外傷は救急救命士として外すことができません。

そこはまずお伝えしておきます。

日本のプレホスピタル系コースの歴史を考えてみると、外傷系コースの普及によって救急救命士業界にも「コース」という概念が広く普及しました。

そこは素晴らしいことで、当時のインストラクター達は休み返上で、かつ完全ボランティアでコースの普及に貢献しました。

それから10年以上の時間が経過した今。

実はジワリと次のステップに移行しつつあります。

外傷系コースで習得できる内容は、基本的には運動スキルです。

つまり、身体観察の方法やバックボードの取り扱いなど、思考スキルより運動スキル(手技)に重点を置いた内容です。

そして、暗黙の了解で、想定の負傷者は基本的には全てが「ショック状態」。

生理学的所見をアセスメントすることより、呼吸や脈拍の触知方法をさらっと流す。

そんなスタイルがこれまで主流だったと思います。

しかし、外傷系は迅速なスキルと同時に、迅速な思考回路がとても重要です。

ロード&ゴーの場合、現場滞在時間は5分以内とされているように、救命のためにはスピードが非常に重要です。

そう、重症外傷においても臨床推論が極めて大切。

  • 受傷機転から想起される受傷部位
  • 生理学的評価から想起すべき損傷部位と病態
  • 今後起こり得る変化を先読みした活動

これら全てが臨床推論です。

各手技や機器取り扱い方法は学生時代に学ぶべき基本的スキルであって、現役の方はそれらを踏まえた上での臨床推論が必要になります。

外傷事案での一連の流れを習得しつつ、臨床推論を学べるコースはPHTLSコースです。

日本では他の外傷系コースと違って、まだまだ認知度は高くないと思いますが、アメリカではとてもポピュラーな資格の1つ。

それもそのはずで、コースの開発やテキスト作成等は全米救命士協会のNAEMT

アメリカのパラメディックはPHTLSの受講歴が求められています。

※州によっては他のコース受講歴でも可

救急救命士に必要なコースはAHAだった

これまでAHAのコースを受講した方は多いと思います。

例えばBLSやACLS、 PEARSコースなど。

今、個人的にはAHAコースに非常に注目しています。

というのも、AHAはインストラクショナル・デザイン(教育工学)を取り入れた教材作成や指導方法を採用しているため、医療的知識の他にも沢山の事を得ることができます。

日本では開催拠点が数カ所存在していますが、個人的には日本医療教授システム学会国際トレーニングセンター(以下、JSISH)と提携している団体をお勧めしています。

JSISHは前述のインストラクショナルデザインを主眼に置いたコース運営を行なっているため、指導者の立場(一般市民に講習する)としても学ぶことが多く、非常に気に入っています。

JSISHのサイトから全国で開催されているAHAコースを検索できますので、もしお住いの地域やその近くに活動拠点がある方はぜひ受講してみてください。

単元別のコースは受講しても良いが総合的な思考力は臨床推論しかない

日本では、単元別にそれぞれ独立したコースが主流です。

例えば、脳卒中コース、意識障害コース等ですね。

最初から疾患が分かっているケースを除くと、救急現場は常に要請時の内容(主訴など)から状況をイメージする必要があります。

従って、単元別に独立したコースよりは、総合的に思考回路を学べるコースや研修会が極めて重要です。

救急隊員であれば誰もが知っていること、

つまり同じ現場は1つとしてないことです。

ですから、「こんな時はこうする」ではなく、どのような現場でも対応できる思考力と応用力が必要です。

これには臨床推論が大きく関与しています。

それを最も効果的に学ぶことができるのは、AMLS救急活動シミレーション学習です。

それらのコースでは、「A=B、C=D」のように「決められた活動」は求められませんが、現場での総合的な思考回路や、そのための考え方を習得することができます。

きちんとした考え方や応用力があれば、主訴や状況が違っても臨機応変に対応できるはず。

これまで日本の救急救命士業界では、このような教育スタイルはほとんどありませんでしたから、内因性疾患(急病)に対して苦手意識を持つ救命士が多いことが印象的でしたが、これらの学習内容を習得することで、内因性疾患にも広く対応できる思考力を身につけることができるはずです。

単元別でも救急救命士にとって必要なコースはある

例えば、

  • 小児救急
  • 周産期救急
  • 精神科救急
  • 集団災害系

これらは特異的かつ頻度が少ないにも関わらず、いざ発生すれば迅速な対応が求められます。

小児救急はAHA-PEARSコースを受講することで小児に対するアセスメント方法が網羅できます。

周産期救急はBLSOが有名ですが、実は受講倍率が非常に高く、なかなか受講することができないようです。

BLSOでは新生児蘇生(NCPR)も含まれますし、正常分娩の他にも異常分娩の内容も学ぶことができます。

ここが魅力的な内容の1つで、NCPRが必要な現場には必ず母体が存在します。(転院搬送や母体搬送を除く)

その「母体救命」に対する教育が不十分な印象でしたが、BLSOが登場したことでようやく母体に関する内容を学習する機会を得ました。

精神科救急は臨床推論の他に、精神科特有の接し方や話し方が必要ですよね。

集団災害系はMCLSが有名ですが、それ以上に高度な内容を学びたい方はMIMMSが有名です。

まずはAHAコースをお勧めしたい

これまで総額50万円以上のお金を各コースに費やしてきましたが、やっぱりコース受講に必要なお金は安くはありません。

せっかくポケットマネーを使ってコースを受講するのであれば、自分にとって本当に必要なコースだけを吟味して選びたいですよね。

人によっては色々な考え方があると思いますが、個人的にまずお勧めしたいのはAHAコースです。

前述のように教育工学を学ぶこともできますし、AHAの各コースで資料するDVDには必ずアメリカのパラメディックのシーンが描かれています。

ご存知の通り、アメリカにおけるパラメディックの認知度は非常に高く、1つの専門職として認知されています。

そのパラメディック達の活動を「ドラマ仕立て」で観ながら学ぶことができるため、日本の救急救命士にとっても効果的な学びの場であることは間違いないでしょう。

特に受講をお勧めしたいのはBLSとPEARSです。

「BLSは出来るよ!」と思うかもしれませんが、教育工学という視点から学ぶと新しい知見を得ることができますし、何より救急救命士は病院前における蘇生の専門家ですから、エビデンスに基づいた内容をアップデートしておくことは、ある意味、義務であると考えています。

さらにBLSでは、唯一「小児と乳児に対する1次救命処置」を学ぶことができるプログラムです。

日常的に発生頻度が少ない小児(乳児)に対する心肺停止事案に備えるという観点からもBLSコースは非常にお勧めです。

活動拠点によっては、病院前バージョンのBLSを定期開催している地域もあります。

筆者が知る限り、関東では横浜、九州では熊本です。

前述のJSISHホームページからも確認できます。

そしてPEARSは小児を題材とした臨床推論を学ぶことができます。

PEARSについてはこちらの記事で紹介しています。

救急救命士は小児救急に苦手意識を持つ方が多いですね。今回はその理由と、救急救命士にとってオススメの「AHA-PEARSコース」を紹介します。

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